2026/03/10 (火)
なぜ高校に入ると英語が苦手になるのか(その2) ―英語は「きちんと読んだ英文量」で差がつく
脇英語研究室塾長の脇文広です。
前回のコラム「なぜ高校に入ると英語が苦手になるのか(その1)」で、
高校に入って英語が苦手になる理由の一つとして
「文法学習法の誤り」についてお話ししました。
今回はその二つ目、
「英文に触れる量の不足」 について考えてみたいと思います。
高校に入ると急に長文が読めなくなった、という生徒には、ある共通点があります。
それは 英文の形で英語に触れる量が不足している ということです。
英語という科目を、単語や文法を覚える「暗記科目」のように扱ってしまうのです。
しかし英語は、決して知識だけで身につく科目ではありません。
むしろピアノやスポーツに近い、技能の要素が強い科目です。
実際に英文を読み、英語を聞き、繰り返し触れる。
その経験の積み重ねによって、はじめて読解力が育っていきます。
では、なぜ英語学習では「量」がそれほど重要になるのでしょうか。
■ 英語は「語順」で理解する言語
英語は
主語 → 動詞 → 目的語 → 補語
という順序で、意味を前から積み上げて理解していく言語です。
日本語のように「~は」「~を」といった助詞で主語や目的語を示すのではなく、
語順そのものが意味を決める言語なのです。
この感覚は、文法書を読んだだけでは身につきません。
実際の英文を数多く読み、
「この形ならこう意味が流れる」
という経験を重ねることで、はじめて自然に理解できるようになります。
■ 英語は「型」の集合でできている
英語には
・It is important to ~
・There is no doubt that ~
・Not only A but also B
といった、よく使われる表現の型が数多くあります。
こうした型を何度も目にすることで、
英文を見た瞬間に意味の流れが予測できるようになります。
つまり英語を読む力とは、
多くの英文パターンを体の中に蓄えていくことでもあるのです。
■ 中学では量不足が表面化しにくい
ここで中学英語との違いを考えてみましょう。
中学の英文は比較的短く、内容も平易です。
そのため、英文に触れる量が多少少なくても、単語や文法を覚えていればテストで点が取れることがあります。
つまり中学段階では、英文量の不足があまり表面化しないのです。
しかし高校英語になると事情が変わります。
英文は長くなり、内容も抽象的になります。
大学入試では、長い英文を読み続ける力が求められます。
そのとき初めて、英語に触れてきた量の差がはっきりと表れてくるのです。
■ 差を生むのは「英文との向き合い方」
ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。
英語が得意な生徒と苦手な生徒とで、
実際に目にしている英文のページ数は、それほど大きく違わないことも少なくありません。
学校の教科書、問題集、模試。
多くの生徒は同じ教材を使っています。
では何が違うのでしょうか。
違いは 英文との向き合い方 です。
英語が伸びる生徒は
・文の構造を考える
・修飾関係を確かめる
・語順に沿って意味を追う
というように、英文そのものを丁寧に読もうとします。
一方で英語が苦手になっていく生徒は
・文法は文法書で覚える
・英文はざっと眺める
・日本語訳を見て理解した気になる
という学習になりがちです。
つまり、英文を見ているだけで、読んでいないのです。
この違いが積み重なると、三年間で非常に大きな差になります。
■ 英語力の土台になる「精読」
その差を生むのが、英文を丁寧に読む習慣です。
主語と動詞はどこか。
どこまでが修飾語なのか。
文の骨格はどうなっているのか。
こうした点を意識しながら、一文一文をきちんと読み取る。
この 精読の積み重ね が英語力の土台になります。
指導する側も、日本語訳だけを示すのではなく、
文法や文構造を丁寧に説明することが重要です。
そして生徒の側も、
「なぜこの意味になるのか」
「この文の構造はどうなっているのか」
という点に注意して授業を聞き、疑問があれば質問して解決することが大切です。
■ 音読は「きちんと読む量」を増やす
さらに、この理解を確かなものにするのが復習と音読です。
意味を理解した英文を何度も読み返し、声に出して読む。
この反復によって、一つの英文と向き合う時間は大きく増えます。
音読には、英語の語順や表現を身体に定着させる効果があり、
英語力向上に非常に大きな力を発揮します。
■ 英語力の差は「触れた時間の差」
高校英語でつまずく生徒の多くは、決して努力していないわけではありません。
むしろ単語や文法は熱心に勉強しています。
しかし、その知識を実際に使うための
英文と向き合う時間 が不足していることが少なくないのです。
英語力の差は、才能の差ではありません。
英語をきちんと読んできた時間の差 なのです。
英語は知識だけでは身につきません。
英文を読み、聞き、声に出しながら理解を深めていく。
その積み重ねこそが、
英語を本当に読める力を育てていくのです。
なお、次回は三つ目の原因、
単語学習の落とし穴について解説します。
⇒なぜ高校に入ると英語が苦手になるのか(その3)